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神奈川県の中央に位置する県内唯一の村、清川村。宮ヶ瀬湖、小鮎川、そして丹沢大山国立公園と県内屈指の豊かな自然が広がっています。特産としてまず名前が挙がるのが清川恵水(めぐみ)ポーク。丹沢山系の伏流水を使い、群飼育を行うことで、健康に育てられたブタはきめが細かく、やわらかな肉質が特徴です。道の駅清川では部位別に精肉を購入できるほか、2階の飲食コーナーでは豚丼を楽しむことができます。
清川恵水ポークに引けを取らない特産品が清川茶です。宮ヶ瀬ダム建設計画が発表された昭和43年から清川村は第一期山村復興事業に着手。それまで小規模生産だった緑茶栽培を、清川茶として生産拡大していったのです。しかし、近年になると若者の緑茶離れにより、清川茶の売上が低迷。そんな状況を打開したのが、清川村が2024年に発売した茶箱「KIYOKAWA CHABACCO」です。粉状にしたスティックタイプの緑茶で、ペットボトルに溶かし入れて気軽に飲むことができます。ジャンボクリスマスツリーと青龍祭の龍をあしらったかわいらしいパッケージが人気で、月に100箱以上も売れています。おみやげに買っていく人も多いそうです。
道の駅清川で1カ月に700本以上売れるヒット商品の豚丼のたれ。清川恵水ポークを一緒に買って帰れば、自宅でも豚丼を楽しめます。下写真右がKIYOKAWA CHABACCOです。
清川村の水道は丹沢山系の伏流水を引き入れています。この水道水をペットボトルに詰めた「きよかわの恵水(めぐみ)」が道の駅で販売されています。一口飲むと「本当に水道水?」と驚くほどの清らかな味わい。ぜひ、この水で清川茶を味わってください。香りよく、甘みと旨味が広がる清川茶の味はきっと脳裏に刻まれるはずです。
清川茶のほかに、清川村特産のゆずやはちみつ、梅を使ったお酒やジェラートも人気です。冬になると出荷される自然薯にも注目を。清川村自然薯育成会が長年研究開発したもので、粘りが強く、芳醇な香りが特徴で、ファンが多い逸品です。
清川グルメがすべて揃っている「道の駅清川」。地場野菜や清川茶、清川恵水ポーク、お酒など品揃え豊富で、何を買おうか迷うほど。ここで食材を購入し、キャンプや自宅で自分だけのガストロノミーを作るのも楽しい。ぜひ、道の駅清川へ。
今回は冒頭で取り上げた清川恵水ポーク生産者で、(有)山口養豚場代表取締役社長の山口昌興さんに「清川恵水ポーク」の素晴らしさ、おすすめの食べ方などを伺いました。
平成10年度、14年度、16年度に農林水産大臣賞を受賞した清川恵水ポーク。どのようなことに気を配って養豚しているのか伺うと、山口さんは「大切なのは健康に育てること」といいます。
(有)山口養豚場 代表取締役社長の山口さん
おいしい水を飲んで、ちゃんとエサを食べられて、病気なく育っていけばいい肉質につながる。群飼(ぐんし)飼いをしているので、ときにはけんかもしますが、自由に動ける環境があります。その結果として臭みがない肉になっているのです。アニマルウェルフェアという言葉で表現されるように、ある程度の飼育面積があり、食べたいときに食べることができ、眠りたいときに眠れる環境でブタは心地よく健康に育っていきます。いわゆる密飼いにならないことが大切だと山口さんはいいます。そして、ストレスが少なく、病気にもかからず、結果として臭みのない肉になっていくのです。
飼育方法もさることながら、清川村の清らかな水も大きな影響を与えているそうです。ブタの体の約70パーセントは水分です。ものすごく水質のいい丹沢水系の伏流水を飼育豚の飲料水に使用しているほか、体を洗うのにも、夏の対策に使います。ブタは汗腺がないため、水を使って体を冷やしてあげなくてはいけません。暑いときには豚舎に水を張って冷やすのです。良質な水をふんだんに使うことができる、それだけでもものすごい価値だといいます。
山口さんは、昭和36年くらいから養豚を始めて、当初農協で販売したのですが、生産原価と合わなかったそうです。そのため、ブランド化し、ほか地域と差別化していこうと動き出したといいます。そんなときに種豚を取引している業者が、こんなブタがいるよと紹介してくれたのが清川恵水ポークでした。ちょうどそのころ、こってりとした脂身のあるブタではなく、さっぱりとした味わい深いブタを育てたかった山口さんのビジョンと一致。2008年に飼育を始めました。自家配合の飼料を使って、きめの細かい肉であっさりとした味わいのブタができると、次第に地域で応援してくれるようになり、半年後には、横浜市場にも出荷されるようになりました。現在では年間1万頭生産し、半分は地元で楽しまれています。「厚木市の飲食店に卸しているのだけど、そこに外国からいらした方々がうちの豚肉を食べてとても感動したって話があってね。そうやって自分たちの作っている味をわかってくれるとものすごくうれしいね」と地元だけではなく、観光客の方々にも評価されてうれしいと山口さんは教えてくれました。
清川恵水ポークのように飼育するのは、全国的にみると少数派です。生産効率を上げて、すぐに出荷できるように飼育していくのが一般的ですが、清川恵水ポークはじっくり育てたブタ。出荷するまでに時間はかかりますが、ていねいに育てた上質な肉質には、食にこだわりのある方が評価してくれるといいます。手塩にかけて育てた清川恵水ポークをどのように味わってもらうのがいいですか?と伺うと「単純に塩を振るだけなど、素材の味を楽しんでほしい」と山口さんに教えてもらいました。毎週土曜にスタッフと確認のため、精肉を試食します。そのときに塩だけかけて食べるのです。だし汁でしゃぶしゃぶにしたり、とんかつにしたときは、ソースも塩もかけないでそのまま食べるのもおすすめだそうです。当たり前のようにソースをかけて食べるのではなく、さらりとして甘味があり、きめが細かいやわらかい肉質をじっくりと味わってください。「肉質の確認で試食して、やっぱりおいしいなと思う瞬間はたまらないですね」と山口さん。やってきてよかったなと思うし、生産意欲がわく瞬間だといいます。
道の駅清川では、部位別に精肉が販売されています。2階で豚丼を楽しむのもいいのですが、自宅に生肉を持ち帰って、塩だけで食べてみると豚肉のおいしさの幅が広がりますよ。